- 2011年7月 8日 21:35
- 本
少し前に『長いお別れ』を読んだエントリを書いた。
この時、ハードボイルド小説で何を読めばいいのかという質問に、色々上がってきた中で俺が注文したのが、
『長いお別れ』と『新宿鮫』だった。
古典的なハードボイルドと、近代的なハードボイルドを1つずつ、という名目で。
読んでみると現代ものって感じではあるんだけど、公衆電話とかカセットテープとか頻繁に出てくると、やっぱり時代を感じるね。
新宿鮫シリーズの第一作として映画化もされ、日本推理作家協会賞や吉川英治文学新人賞という受賞歴も申し分ないこの作品。
実はまったく知らなかった。
母親の影響で刑事モノののドラマはけっこう見てたんだけど、小説というと殆ど読んだ事がない事に気付く。
犯人を追い詰める緊迫した空気、そしてそれに伴う推理。
ドラマで好きだったその要素を完全とも言える形で持ってる、面白い小説だった。
主人公は『新宿鮫』と呼ばれヤクザから恐れられる孤高の刑事、鮫島。
古典的なハードボイルドで持ったハードボイルドのイメージは確かにちょっと違った感じだけど、揺れない男である。
他にも魅力的な登場人物が沢山出てくる。
鮫島の恋人である晶、鑑識の薮、登場数は少ないがママフォースのママや、弁護士の飛田、それに課長の桃井。
魅力的な登場人物が多い作品は、押し並べて面白い。
冒頭読みはじめ、まずゲイの集まるサウナの話しから初まってビビる。
まぁゲイが作中のキイの1つになったりもするのだが、読みはじめのインパクトとしてはリアリティありすぎてやばいw
中心となる事件は新宿で起きる警官殺しの連続殺人。
出世街道から外れ、警察機構の爪弾きとなった鮫島が、他の刑事たちとは違う形で物語の真相に近づいていく様は、ほんとに手に汗握る面白さである。
警察機構の話しやゲイの話し、それに銃の話しやら細かいディティールが描かれてリアリティのある中、鮫島の設定だけはちょっとファンタジーというかドラマ的すぎて妙に浮いた感じもあるのだが、それが逆にカッチリハマっていてとても面白い。
加えてさらに、偶然というか宿命的な繋りがあったりして、その辺は御都合っぽさもあったけど、最後までのスピード感ある進行の中で違和感を感じさせるようなものではなくて、むしろ┗|┳|┛<ウオオオォォォ!!!って感じで盛り上がっていく。
ちょっとだけ個人的に合わなかった所をあげるとしたら、刑事モノのマニアであるエドという男。
彼の話しは物語のアクセントだったり、鮫島の形式的なライバルである香田に対するスケープゴート的な扱いなんだろうけど、ちょっと読んでいてダルかった。
全体的にスピーディーで展開がガンガンすすむ作品だけに、エドの視点になる度に本を読むのが失せるのが勿体無い。
(まぁあくまでも個人的な得手不得手の問題だと思うけどね)
まぁそんなマイナスは中盤までの話しで、最後はほんとに駆け足的に物語は収束していく。
推理もありつつアクションがある、一気に読んでしまえる魅力のある作品だった。
最後はこれでもかってくらい綺麗に収束するので、ストンっと終わっちゃって読後感に欠ける所があったけどね。
でもそれは「もっと読みたい欲求」の現れであって、読みおわってから新宿鮫シリーズはこの後沢山でてるというのを知って安心した。
回りでは特に4作目の『無間人形』が評価が高いようなので、読むのを楽しみにしておきたい。
シリーズ読むのも楽しみなんだけど、他にtwitterで勧められたハードボイルド小説が気になってる。
『私が殺した少女』ってやつなんだけど、近いうちに読みたいね。
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