少し前から回りで流行っていて、絶賛の声ばっかりでとても気になっていた貴志祐介さんのこの本。
いつもの天邪鬼な感覚で流行っててお勧めされると読まない傾向があるんだけど、「気になるな~(チラッチラッ)」みたいなスタンスでいたら友人が譲ってくれたので、ガッツリ読み始めました。
一気に読むと際限なく読んでしまうので、とりあえず通勤の電車で読むという制限のもと、まる2週間で先日読み終わりました。
丁度帰りの電車で最寄駅にさしかかる所で読みおわったが為に、あとがきは改札を通りつつフラフラして読んでしまった。
上中下の文庫3分冊1500ページ弱(あとがき曰く四百字詰めの原稿用紙2000枚分近く)。
それだけでけっこうな分量の物語だと類推できるんだけど、そんな類推すらふっとばす程のボリュームの物語だった。
ほんと何か一度に沢山の小説を読んだ、みたいな錯覚に囚われますね。
少年少女もの、未開探検もの、青春もの、社会派ミステリー、パニックホラー、逃走もの、そしてSF。
この本は全部で6章にわかれてるんだけど、章が変わる度に劇的に展開していくので、ここで全体のあらすじを書いてしまうのは抵抗がある。
なので1章だけのあらすじをちょっと書いてみる。
未来なのか過去なのか異世界なのか、現代の日本に近いような生活感を持っているようでいて、不思議な呪力という力を皆が持ち、それに頼って生活している世界。
そんな世界で、主人公である渡辺早季がまだ呪力を使えない子供だった頃の話しを回想して小説を綴っていく所から物語が始まる。
そこには我々の世界からすると考えられないような習慣をもった異質な生物が沢山出てくる。
ミノシロやトラバサミ、カヤノスヅクリ、そしてバケネズミ。
そして町に語り継がれる恐しい悪鬼と業魔の伝説、、、
ミステリアスな空気を漂わせつつも、物語は主人公達の成長を追っていく。
呪力を身に付け進学した主人公達は、夏季キャンプと呼ばれる普段は出れない町の外のエリアへ子供達だけの課外活動にでかけのだが、
そこでちょっとした好奇心である生き物に出会う所から物語は大きく動きだす...!
いやーなんだろ、あらすじ書くのって難しいね。
色々と頑張ってぼやかして書いてるけど、実はもっと核心よりな事が文庫あらすじ欄とか、本家サイトとかに書いてあったりします。
俺それすら読まずに読み始めたので、完全に事前情報が無い感じだったけど、作者はそれを前提として書いてんだから、そんくらいの情報の無さで読むのが一番面白いと僕は思ってます。
閑話休題。
1章だけだと、ミステリアスな空気のある異能者世界の少年少女ものって感じ。
ただ世界観はなぜか美しい田舎の日本というか、もう失われつつある自然美に囲まれた世界だったりする。
魔法みたいなのの学校ってので、何だかハリポタのホグワーツみたいな雰囲気が思い浮かぶんだけど、
個人的には恩田陸の『麦の海に沈む果実』の学校の雰囲気を強く連想した。
ただ、単体の少年少女ものにしてはSFとしての世界観を段階的に説明するための章になってるので、伏線とか設定の為に沢山話しが挟まるので、ちょっと読みにくさはあるかもしれない。
(それだけでも十分長いけど)とりあえず1章を読みおえて2章を読み始めたあたりから、もう読むの止めれなくなるんじゃないかなって感じなので、最初でダレそうになる人も是非2章までは頑張って読んでほしいですね。
元々友達から譲ってもらった本だったので、ここで読みたい人がいたらあげるよーって書こうと思ってたんだけど、
Facebookの方で読んでみたいって人がいたので、そうそうと行き先が確定してしまった。
なので、試しに上巻だけでもこっから買うといいですよ!!!
個人的な感想
十二分にネタバレを含んでて未読な人に向けて書いてないので、こっから先は未読な人は読まない方がいいと思う。
序盤や3章の少年少女ものっぽい雰囲気はけっこう好きで、上述したように『麦の海に沈む果実』なんかを思い出させる。
ただちょっと中弛みしてきたかなーって所で謎が解かれてきて急展開の2章に入っていくのが熱い!
2章はかなりの勢いで読んだけど、テンポがいいかっつーと、これは回想として書かれてるし、知識は後付けで得たもんだよ みたいな注釈がちょくちょくはいってたね。
個人的には2章のラストの方でスクィーラが『神様ではなくなったのですか?』って問うシーンと、奇狼丸が義理を見せるシーンがとても好き。
バケネズミの多様性と人間っぽい情の発露を強調してる感じだったのかな。
(このあたりでグルグルのタテジワネズミのビジュアルを奇狼丸に重ねてしまったので、この先どんだけ醜悪な感じの表現があっても脳内のビジュアルはタテジワネズミだったわ。
ちなみに本家ページに実はバケネズミやカヤノスヅクリのイラストがある。
とても世界観に引き込むのがうまいので、おもわずがーっと読んでしまいそうになるんだけど、情報量もなかりのものなので、ゆっくり咀嚼しながら読んでいくのが面白かった感じ。
要るのか?みたいな生物界の描写がけっこうあるんだけど、それぞれが密接に絡みあって実際の所は最後まで無駄なものが全然なかった。
ほんとに著者さんの知識の幅と構築の上手さに舌をまく。
あとがきが絶妙な感じな解説になってるので、読みおわってて読んでない人はちゃんと飛ばさずに読みましょう。
3章にきて、性描写っぽいのがちらほら出てて、1章だけ読んでると今と何ら変わりない社会構造だなーと思ってたのに、
1章ラストのミノシロモドキのボノボについての解説のあたりでけっこう衝撃的な感じでしたね。
あと個人的に好きなシーンというかやられた!って思ったシーンとしては、すばるが不浄猫に立ち向かうシーン。
あれはズルいわー。
4章では今迄語られなかった所が語れて、正直小説としてこれで終わりでもなりたつような感じだったが、
まぁ伏線貼りまくってた真理亜の話しやら、バケネズミの話しやらが出てくるのでこわれは終われない。
そして5章にはいって「えっ」ってなる。
まさかの10年後。。。
そもそもが大人の視点から回想として描かれてたので、最後までそうなんだろうなーと思いこんでたので意表つかれますね。
そして同じく意表つかれたのが悪鬼の正体。
多分勘のいい人はもっと序盤で気付くんだろうけど、「身長が低い子供みたいな、、」って感じの描写でるまで気付かなかったわw
DNA鑑定までしたって言ってたけど、今迄ずっと貼られてた真理亜の伏線の所為で、完全に骨のDNA情報まで複製するような技があったのかな~みたいに考えてた。
あとはホラーものから逃走もの、そして逆襲してみたいな展開の流れで、まぁ普通におもしろい小説みたいな感じ。
日野光風の戦闘シーンとか、何かいきなりウィザード級みたいな人が出てきて超強くて戦闘ものとしてすげー面白かったので、あの辺主軸の話しとかもっと読みたいw
最後の方のサイコバスターとりにいって倒す所までの流れは、あまり読んでて燃えなかったんだけど、その戦いが終わって町に帰ってからの所がまた面白いですね。
(結果的に読後感はそんなによくないが、、、
まぁ何はともあれ、最後まで面白い作品だった。
感想をつらつら書いてみているわけだけど、実は最初に1章読む毎に付けてた感想メモがあって、それをベースにエントリにしようかと考えてた。
でも読み返してみると中学生の感想文みたいな感じで、とても残念であった( ´-`)
今迄意識してレビューって書いた事がなかったんだけど、書評ってのはこんなに難しいもんなんだなぁと痛感させられました。
あらためてレビューとして書いてみようと思って真っ新な入力欄の前でキーボードに手を置いたものの、出てくるのは唸り声ばかりで、最終的には横に置いてある漫画に手が伸び・・・
まぁ背伸びして書くのは諦めて最終的にはあくまでも『個人的な感想』を書くに止めたわけだけど、
今回の敗因としては日記だし読みおわった本を書いていこう という気軽な気持でスタートしたって点で、
作品への『愛』が足りなかったのだと思う。
学生の時ほどではないにせよ、前より小説読む量が増えてきたので、ちょこちょこレビュー記事みたいなの書いていきたいなぁ。
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