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映画『カティンの森』を見てきた

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今週1週間、四条烏丸にある京都シネマで『2010京都シネマBEST10"アンコール上映』というのをやっていて、去年見逃した気になる映画がちらほらあるので見にいってきました。

2010BEST10|京都シネマ

BEST10と言いつつ、実際に放映するのは3位までなのがよく分からないのだけど、ランキング的なのは会誌に書いてたし現地にも貼ってた。

今日はその3位にはいってる『カティンの森』という映画をみてきました。


カティンの森

この映画は『カティンの森』という場所を舞台にした映画、ではない。

この映画は第二次世界大戦中に起きた『カティンの森事件』と呼ばれるソ連による大量虐殺事件を題材に、戦時中の被害者遺族達を描いた映画です。


冒頭は捕虜となった将校が移送される前、危険を省みず彼を探しにきたアンナと娘の姿が描かれる。

でもこれは捕虜となった将校と、引き離された妻のラブストーリーではない。

物語の中盤までは彼女の視点が多く描かるが、事件の被害者は一人ではなく、遺族もまた一人ではない。

多くの視点をもって描かれる、壮大で複雑な映画だった。


俺はこの『カティンの森事件』というのを全然知らなかった。

教科書とかでは書かれていたのだろうけど、敗戦国であるドイツが行なったアウシュビッツに代表されるような大量虐殺と比べて、日本のメディアに載る機会はとても少ないのではないかと思う。

なぜなら、この事件は戦勝国ソ連が行なったものであり、また戦後のポーランドはソ連によって管理下に置かれていた。

新生のポーランド政府には、事件後にソ連を糾弾する力はなかったばかりか、この事件そのものがドイツによるものだという歪曲された歴史を宣伝せねばならなかった。

長年タブーとされてきたこの事件を、ポーランド人であり、両親をこの事件で亡くしている、御年80才のワイダ監督が長年の念願適って撮影したのがこの映画だったのだった。


夫を待つアンナ、息子を待つ教授夫人、父を待つヴェロニカ。

帰還し、ソ連が主導する新生ポーランドの将校となるが、真実を知り苦悩する者。

新体制下で、政府に押し付けられた歴史に反発し真実と共に戦う人々。

生きていく為に、たとえ思いと反しようとも"出来る限の自由"を求めてそれに従う人々。


体制に反発する事だけが戦いではない。

新体制下で大量虐殺を行なったソ連側に残り、文化を育て生き抜く事を選ぶのもまた戦いだった。

『自由なポーランドはあり得ない、覚えておいて。』『二度と』


それぞれの思いに一通りの(幸福とは言えない)結着を見た後、映画のラストに描かれる衝撃的な映像。

そしてエンドロール。



静かなエンドロールの中、映画館内は完全に沈まり帰ってた。

誰も動かない、誰も声をあげない。

それだけの衝撃がそこにはあった。

そしてこれは全て史実なのだ。


いくつか戦争の欺瞞を描いたような作品、戦争捕虜を描いた作品は見た事があるが、

ここまで衝撃的なものは始めてだった。


この連綿なる静謐な物語のラストにあの映像をもってくる事は必要だったのかと考えてみたが。

あの衝撃こそが、睛を描かれた竜が飛び立つ鍵といえるかもしれない。


多くの人に見てもらいたい知ってもらいたい映画でありながら、気軽に勧められるような映画でもなかった。

とりあえず回りの友人には勧めてみようと思う。



11日の金曜日まで1日1回放映しているので、もし足を伸ばせる人は是非見て欲しいと思う。


僕は明日はランキング1位の『瞳の奥の秘密』を見にいってきます。


余談というか、そんだけ感動しといてそれかよ!みたいな所もあると思いますが。

エヴァ役のアグニェシュカ・カヴョルスカがすげーかわいかったです。


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