授業中や移動中に読み進めていたこの本も、とうとう終ってしまった。
このblogに最初に書く書評というか本の感想が、クリスマス・テロルなのは、本の内容と照らしあわせれば面白いことかもしれない。
佐藤友哉。
この作家の本を手に取ったのは、ほんの気まぐれだった。
しかし、彼は私のような志向の嗜好を持つものにとっては、至高の逸材だ。
自分が読む、国外の作家ってのはそんなにいない。サリンジャー、オースター、フォークナー。そんなところ。
そして、佐藤友哉は『そんなところ』を突いて来る。
サリンジャーからの引用が好きで、さりげに引用してくるどころか、引用好きのキャラまで出してくるし。
そもそも、鏡家サーガシリーズそのものが、同じく狂った血族を描くサリンジャーの「グラース・サーガ」シリーズと繋がってる。もう鏡→グラースってくらい繋がってる。
オースターも、よく引っ張ってくる。
クリスマス・テロルなんかは「記憶の書」を読んでる人間が思わず笑ってしまう表現があふれていた。
『思い出せ!』『~~すること』ってフレーズがどこまでも印象的。
そして、今回もう一人名前が出た作家。
中島敦。この人の山月記という作品がめっぽうお気に入りな私としては、佐藤友哉とどこまでも嗜好が近い気がして、喜びのような感覚を得るとともに鬱な気持ちになった。
ちなみに、カフカやジョイスは積読状態で読んでないけど、この辺もひっぱってきてるらしい。
読んでみようかな。
3冊目までで、叙述トリックに飽きを感じはじめていたけど、この作品を読んでまた一つ上の段階に達したように思えた。
叙述どころではない、作者がしゃしゃりでてくる。
書くことの意味まで論じ始める、言い訳すら始める。そして愚痴る。
それが作品の内部にしっかりすっぽりはまってる。むしろ本質なんだろうか。
この絶望とも取れる問いかけの答えが、3年の間を置いて出された鏡家サーガの新作「飛ぶ教室」であるなら、こいつは早く読まないといけないな。
移動時間くらいしか読めないくせに、自転車移動だから遅々として進まないけどね。
カバー作品しか出さない作家は、いずれ忘れられるのかなぁ。
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