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『長いお別れ』を読んだ

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『ハードボイルドって何なの?』という俺の無知な質問に、根気よく付き合ってくれた友人たちに感謝。


解説してもらった感じだと、ハードボイルドは時代とともに変わっていったジャンルでもあり、

初期のハードボイルド(固茹で)の文字通り『感情的に揺れない、堅い感じの視点で話が進むお話』から『銃と硝煙な雰囲気』に転換していってるみたい。


俺が『ハードボイルド』の語感のイメージとしてもっていたのは前者なんだけど、漫画とかだとどれがハードボイルドに当たるの?って質問には後者に属するものばかりだった。

『ブラックラグンーン』『カウボーイビバップ』『シティーハンター』『コブラ』


まぁそういうのも嫌いじゃないけど、まず前者のに触れてみようという事で手にしたのがこの『長いお別れ』でした。


To say Good bye is to die a little.

さよならを言う事は、少しだけ死ぬことだ。


名作中の名作であり、ハードボイルドの歴史を作ったと言われるほどの作品。

ハードボイルドがどういうものかと手に取った人間をハードボイルドの世界に魅了してしまうだけの魅力がこの本にはあった。

掛け値なしに面白かった。


主人公は私立探偵のフィリップ・マーロウ。

事件にまきこまれ、警察といがみあい、政治的圧力により一旦の解決をみた事件をほり下げていく。


一見すると今でもよくある探偵もの(というか火サス)の骨子と似通ったものがある。

でも今の作品にあるようなスリリングな犯人との追いかけっこや格闘なんてものは発生しない。

事件の真相に関わる人物も、まったく関係ない人物とのやりとりも淡々と進む。

そして、マーロウはブレない。


今の怒涛に展開していくようなサスペンスものに慣れてしまっていると、退屈と感じられなくもない進行だけど、物語の展開だけは退屈させないものだと言いきれる。


自分の信念に従ってブレないマーロウに読みすすめていくちに惹かれていく。

その信念は必ずしも"正義"ではない。

誰の為という事もない。

しいて言うなら自分の為。


こんな面白い作品が半世紀以上も前に書かれていたというのは驚きだし、俺が読んでこなかった小説にも名作がゴロゴロしてるんだなと思うとヨダレがでますね。

古典という程には古くないけど、村上春樹さんがハードボイルドではなく「準古典小説」と表現してるというのをみて得心がいった。

(俺が読んだのは春樹さん訳のものではなく少し古い清水俊二さん訳の方ですが)


ただ準古典の弊害として、50年前のアメリカを知らない人間が読むにはちょっと躊躇われる下りがけっこうある。

固有名詞を元にした文句とかは最低限の注釈がついてるんだけど、時代的な背景とかの解説とかまではしてくれない。

その辺村上さんの訳の方の本だとどうなっているのかってのにも興味がありますね。


どちらを買うか悩むなら、読みやすさ的にも現本に忠実だという点からも村上さんの方を読む事を(俺は未読だけど)勧めます。





この記事書きつつ調べてて気付いたけど、著者のチャンドラーが亡くなって50年以上経ってるんやね。

となると、著作権が切れている事になる。

まぁ訳の方の著作権が切れてないうちは青空文庫にそのままきたりしないけど、日本の作家も含めてこういう準古典の名作が続々著作権フリーになっていくってのは凄い時代だなー。

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